今回は油絵やアクリルでキャンバスに絵を描くとき、
絵の具を使う前の下描きについて解説します。
油絵やアクリルは塗りつぶせば
描き直しが可能なので下描きは無くても
絵を描くことが可能です。
しかし、下描きをしっかりすることで
形の修正が少なくなり早く絵の具を塗ることができます。
下描きの前段階は美大受験のデッサンでも使用していました。
もくじ
使用する道具について
キャンバスに下描きをする際は木炭や鉛筆を使って下描きの線を描きます。
- 木炭
木炭はキャンバスに描いてもそのままでは
定着しないので布で擦ることで簡単に書き直しができます。
自宅で使用する際には
粉末で汚れないように注意してください。
定着にはフェキサチーフというスプレーを使います。
無い場合は筆鉛かシャーペンを使いましょう。
- 鉛筆
ここでは手軽に扱える鉛筆を使用して解説します。
シャーペンでも大丈夫です。
鉛筆やシャーペンの難点は
キャンバスに描くと線が消えにくい点です。
濃く描きすぎると正しい線が
分からなくなるので注意が必要です。
色の薄い鉛筆で描くようにしましょう。
- 練り消し
消しゴムでも良いですが、
練り消しの方が消しカスがキャンバスに残らず
消しやすいのでオススメです。
- 定規か定規の代わりになる物
キャンバスやモチーフの比率を確認するのに使います。
30cmほどの定規か長めの筆、鉛筆でもかまいません。
- フェキサチーフ
スプレータイプの定着剤です。
木炭や鉛筆の線をキャンバスに定着させます。
鉛筆の種類
鉛筆はなるべく薄い色の方がいいです。
濃い色は芯が柔らかく、
キャンバスの表面にかくとキャンバス面の
凹凸でやすりのように芯が削れて
消費が激しいので色が薄くて芯が硬い
H以下の鉛筆を選んでください。
私は4Hや2Hの物を使用しています。
硬くて薄い色の芯の方が
キャンバス面で削れにくく
キャンバスが真っ黒になりにくいです。
鉛筆で下描きすると間違えた線を
綺麗に消せないので濃い鉛筆で描くと
消しゴムや練り消しで消しても
線の痕が残ってしまいます。
そのため、なるべく薄い色で
描くようにしましょう。
シャーペンで下描きする場合もなるべく薄い色が良いです。
鉛筆はどんなメーカーの物でも大丈夫です。
普通のユニの鉛筆を使っています。
- ユニ
オーソドックスな
誰でも一度は見たことのある鉛筆。
私がメインで使っているのはこれです。
- ハイユニ
上記のユニより僅かに値段が高い。
- ユニスター
描き味の違和感はありませんが
カッターで芯を削ったとき
木の部分が縦に割れやすいのが気になりました。
エスキースと資料
エスキースとはフランス語で
下絵や素案のことを意味します。
絵の全体の構想を考えます。
キャンバスに下描きをする前に全体の構図を決めます。
キャンバスの上で考えると
線を消すのに時間が掛かったり、
キャンバスが汚れてしまうので
事前に別の紙の上で考えましょう。
自分の中でイメージが固まらないうちは
スケッチブックの上に小さくでもいいので
幾つもアイデアを出してみましょう。
アイデアがまとまらない時は
色やモチーフから
連想するイメージを言葉にして
書き出してみるのもいいです。
世界観を自分の言葉にすることで
絵に必要な要素とそうで無い要素が分かってきます。
色鉛筆などで簡単に色づけをして
配色のイメージを固めておくと
絵の具を塗り始めてからの失敗が少ないです。
配色に自信の無い方はこの段階で色を決めておくと早く進みます。
- 資料
色やモチーフの資料も
この段階で集めておきましょう。
資料に写真を使用する場合は
自分で撮影した風景や動物、花などの
画像を使うとより作品とコンセプトに親和性が生まれます。
配色に関しては
「カラーパレット」
で検索するとたくさんの配色提案サイトが
あるので参考にしてみてください。
自分の思っていなかった色の組み合わせがあると思います。
下描きの方法
エスキースができあがったら、
いよいよキャンバスに下描きを始めます。
キャンバスにガイドラインを描く方法
花の写真を元に絵を描く例を挙げてみます。
まずはキャンバスのガイドラインを引きます。
小さいキャンバスであれば
定規で長さを測ってもよいですが、
100号など大きいサイズのキャンバスに
長さを測らずに線が引けるようになる方法です。
デッサンでモチーフを鉛筆と目を使って測る方法と同じ要領です。
- キャンバスの左側からキャンバスの中心あたりに筆をあてて鉛筆で小さくチェックを付けます。(このとき写真の親指の爪の位置をずらさないようにしています。)
- 右側も同じようにチェックを付けます。右側と同じ長さになるように筆を持った手の位置は決して動かさないでください。ミリ単位でも動かさないように心がけることで正確なラインが描けます。
- 二つのチェックの丁度中間にチェックを付けます。これがキャンバスの左右からの中心になります。
- キャンバスの「左右からの中心」を筆で測ります。
- 筆で測ったキャンバスの「左右からの中心」をキャンバスの上と下にもチェックします。
- キャンバスの上下のチェックと③のチェックを繋ぐ線を引きます。慣れるとフリーハンドでも真っ直ぐ引けるようになります。
- キャンバスの向きを変えてもう一度、左右から筆を使ってチェックを入れます。
- ④と同様にキャンバスの中心を筆で測り、測ったキャンバスの左右からの中心をキャンバスの上と下にもチェックします。
- ⑤と同様に⑥と⑦のチェックを線で繋ぎます。これでキャンバスに十字のガイドラインが引けました。初めての人はここからさらに細かくグリッドを描いていきましょう。
大きいキャンバスの場合は
「右から筆2.5本分」「左から筆2.5本分」の中心
というようにして測ります。
こうすることで
大きな画面でもメジャーや長い定規が無くても測ることができます。
写真のモチーフにガイドラインを引く
次に資料写真にも同様に線を引いていきましょう。
F6号のキャンバスに下描きしているのでF6号の比率でラインを引いています。
ここではパソコンの画面上で線を引いた例です。
使用するキャンバスの縦横の比率と同様に
キャンバスの外枠となる線を引き、
キャンバスに引いたグリッドと同じ数だけ
さらに線を引きます。
後は資料のガイドラインを元に
モチーフの輪郭線とガイドラインの
交差している位置を確認しつつ
キャンバスに輪郭線を描いていきます。
モチーフの縮尺を測る
次はキャンバスの外側の線を資料に引かず、
モチーフの縮尺を測りながら
キャンバスに下描きをする方法です。
「キャンバスにガイドラインを描く方法」までは同じです。
モチーフの資料が複数ある場合や、
実物のモチーフを見ながら形をとるときに有効です。
要領はキャンバスと同様で
- モチーフのバラの左側から中心あたりに筆をあてて鉛筆で小さくチェックを付けます。
- 右側も同じようにチェックを付けます。右側と同じ長さになるように筆を持った手の位置は決して動かさないで右側からも同じようにチェックを付けます。
- 二つのチェックの丁度中間にチェックを付けます。縦に線を引きます。
- 同様にモチーフの下側からモチーフの中心を筆で測り、測ったモチーフの上からチェックを付ける。上下のチェックの中心にチェックを付けます。
- 上下の中心のチェックを横切るように線を引きます。
これでモチーフに十字のガイドラインが引けました。初めての人はここからさらに細かくグリッドを描いていきましょう。
資料が調ったら
キャンバスのどの位置に
モチーフのバラを配置するか決めます。
- 薄く描いた丸い線がおおよその位置です。位置がだいだい決まったら、モチーフの中心の位置をチェックしていきます。
- 自分で決めた位置の左右にチェックを付けます。キャンバスを測った時と同様に左側から中心あたりに筆をあてて鉛筆で小さくチェックを付けます。左側と同じ長さになるように筆を持って右側も同じようにチェックを付けます。
- チェックの中央にガイドラインを引きます。
- バラのモチーフは高さ:横幅が9:10くらいの割合だったので右から4.5くらいの割合を筆で確認し、縦のラインからその4.5分の長さを上下にチェックします。これで、モチーフの収まる高さが決まりました。さらに上下左右の半分の位置にそれぞれチェックを入れます。
- キャンバスにモチーフのガイドラインが引けたら資料のガイドラインを見ながら形を描いていきます。何度も練り消しで線を修正しながら書き進めていきます。工業製品で無い場合は多少形が実物と違っていても大丈夫なのでガイドラインの幅を越えてもかまいません。美しく感じるフォルムを目指します。
- 不必要な線を消し、背景を加えて下描きの完成です。
最後にフェキサチーフを画面に吹きかけましょう。
フェキサチーフで鉛筆の線を定着させることができます。
まとめ
という部分に注目して説明しました。
もちろん下描きなのでざっくりとした段階までしか描かずに絵の具を塗り始めることも可能です。
絵の具を使いながら何度も画面の上で書き直すことも
作品に厚みが出て濃厚な画面になります。
しかし、油絵の場合は絵の具が乾くのに時間がかかるため、
描きながら修正すると
形をとるのが苦手な人はなかなか絵が進まず達成感が得られにくいと思います。
そのため、事前に下絵をきちんとキャンバスの上に作ることで形の取れた絵を描くことができます。