絵画の構図を決める!美術・デザインにおけるコンポジションの考え方

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今回は「コンポジション」についてお話しします。

コンポジションという言葉を初めて聞く人も多いと思います。

 

美術とコンポジションの関係、

自分の作品にコンポジションはどう関係あるのか、

これから作品を作っていく皆さんの参考になれたら嬉しいです。

コンポジションとは?

コンポジションという言葉には

構成、組み立て、合成、構図

などの意味があります。

 

美術だと色彩のコンポジション、形のコンポジションなどと使われます。

美術系の学校だとカラーコンポジションの授業などが実際にあると思います。

 

構成の授業や課題と考えると

ちょっとつまらないように感じるかもしれませんが

知っていると絵を描くときに役に立つことなので

頭の中で意識しながら制作するとどんどん慣れてくると思います。

 

コンポジションは音楽建築などでも使用される言葉です。

 

 

絵画デザインでは画面を構成していく中で

見る人に伝達していくいくつかのルールや仕組みがあります。

 

それを上手く取り入れることで

作者の意図したメッセージを

言葉にせずに絵で伝える事が可能になります。

 

次からはそのルールを紹介します。

 

 

作者の意図を伝える構図

ムーブマン(動勢)

例えば矢印の先のような尖った形を持った図形があったとします。

その図形の尖った先端

右上を向いていれば右上がり

右下を向いていれば右下がりに

向いていれば

その図形は右上がりや右下がりになっているような動きが感じられます。

 

風景画だとが連なるようにを飛んでいるとします。

雁が飛ぶ様子は先頭の一匹から左右に広がって飛びますよね。

その連なっている形態がムーブマンです。

 

ムーブマンの強さ方向

余白複数のムーブマンが存在している時の

印象の強弱を考えて

画面に配置する事で

意味を作ることができます。

 

シンメトリーとアシンメトリー

シンメトリーとは左右対称のことであり

アシンメトリーは左右非対称です。

 

線対称になっている図形は見る人に

まとまり安心感を与え

左右非対称にする事で

動き緊張感を作り出す事ができます。

 

見えのまとまり

別々の図形近くのもの

似た形のもの

同色のもの

まとまって知覚されます。

 

絵の中で一カ所にモチーフが集中していると

一つの塊として見えます。

 

 

図形構成の注意点まとめ

画面上にモチーフを構成していく上で

まとまり

重複

見せ場

全体のバランス

の要素が大切です。

 

まとまり
形や色の特徴を活かしつつまとまり感を持たせる。 まとめすぎ、単純化しすぎないようにする。

 

まとまりとは

モチーフが重なっている場合や、

モチーフが混み合っているとき、

塊のシルエットではモチーフが埋もれてしまって

それがもともと何のモチーフなのか分からない場合があります。

 

そうならないために

何のモチーフ同士が組み合わさっているのか

分かるようにあえて元のモチーフの形が

認識できるようにモチーフの形を認識できる部位を

突出させて組み合わせるようにします。

 

逆に一体感を持たせるために

組み合わさったモチーフの

シルエットのアウトラインから突出しないようにする

シンプルでまとまった印象にすることができます。

 

重複
印象の近い形や色をまとめる。 異質なもの同士によるあらゆる重複を避けた配置を心がける。

 

重複とは

画面の中でそれぞれのモチーフの大きさ同じ面積にならないようにしたり、

色面によって面積に差をつけたり

形を多様にして同じ形を複数描かないようにします。

 

赤いバラの花束などがメインのモチーフであれば

と同じ面積だけのモチーフを配置しないようにして

色が喧嘩しないように気をつけます。

(赤と緑は真逆の色である補色の関係なので同じ面積ずつ画面にあるとどちらがメインの色か分からなくなってしまうからです)

 

モチーフの塊の中に出来る一つ一つの角度はばらつかせるようにします。

(バラの花束の一つ一つのバラの向きをばらつかせる)

 

見せ場
見る側の目を引きつけられる見せ場の部分の設定をする 画面の中に主従関係を作り、 主役と脇役を作り出す。 視線誘導による視覚情報を効率よく伝達することや 飽きさせない効果をもたらす。

 

見せ場の作り方は「粗と密」の関係を作ることでできます。

密集している部分とまばらになっている粗雑な部分を画面の中に作ります。

 

見る人にとってメインの範囲である

「密」の部分は画面に対して小さい面積でも

複数の色面が混み合っていたり

色の明度にコントラストをつけることで見せ場にすることもできます。

 

「粗」は小さな主役を目立たせる余白。

画面の中に描きたいメインのモチーフが小さい場合でも

主役を引き立たせるために

その周辺に広く余白をとります。

この様な余白を「領地」といいます。

領地をとる事で小さく描いた主役も主役らしく引き立ちます。

 

全体のバランス
画面全体や画面の中のそれぞれのモチーフ群には アシンメトリーで様々な側面からの 良い視覚的なバランスが必要。 色の強さ、重さ、動き、方向などが相互に影響しあうので 全体を考えて総合的に決めていく。

 

動きのある画面を作るためには

ムーブマン(画面に配置するモチーフの傾き)の方向は

垂直や水平になることを避け斜めに傾けます。

モチーフの面積は背景の面積より視覚的に大きくします。

しかし圧迫感を与えない程度の面積にするのがポイントです。

 

 

コンポジションの必要性

なぜコンポジションが大切か、

構成する上で忘れてはいけない事は

構成のルールやデザイン的な知識は

自分の考えを「絵を見る人」に真っ直ぐ伝える為の方法

だという事です。

 

自分が思い描く世界

伝えたい気持ち

知って欲しい事

 

それらを伝えるために

構図などの知識を使って表現するのです。

 

しかし

ルールに基づいて描けば

綺麗な見やすい絵は作れるかもしれませんが

作者が伝えたい事が何も無い状態で

ただ表面的に美しく整えるだけでは

見る人の心に響く作品にはなりません。

 

逆に

ルールやデザイン技術を意識して描くことは邪道だ!

描きたい気持ちを自分の感じるままに

ストレートに画面に表現するべきだ!

という意見もあるかと思いますが

 

それが行き過ぎると独りよがりな作品になってしまいます。

自分が描いて満足な絵であればストレートな表現だけでもありだと思います。

 

しかし、

多くの画家は描いた作品を人に見てほしい

いい絵だねと言ってほしいと思っていると思います。

 

その為には

私の絵を見る人が汲み取って理解しろ!

というだけでは伝わらないと思います。

 

 

日本語の分からない友達に

日本語だけで語りかけても何を言っているのか伝わらないのと同じです。

 

そんな時は

身振り手振りで表現したり

自分が英語を調べたり

図を描いて説明したり

相手に寄り添う表現をすると思います。

 

 

自分の描きたいことは

何の画材を使えば伝わるかな?

モチーフはどこに配置すれば伝わるかな?

こうすれば伝わるかな?

 

と試行錯誤を繰り返して

見る人と描く人のコミュニケーションが作品を通じてとれる時、

良い作品が生まれると思います。

 

 

まとめ

・まとまり

・重複

・見せ場

・全体のバランス

を考えて構成を考えます。

これらの要素は黄金率や画面の何等分かなど構図よりも考えやすいと思います。

コンポジションを考えることは見やすい絵を作るだけでなく、見る人に作者の意思が伝わるようにする工夫です。

作者の意思が伝わるにはどんな構成が良いか考えることで

自分の作品の世界観を作品の上で深めて見る人の心に響く作品を作っていきましょう。

 

 

参考文献

書籍

木下武志・木村久美子.『木下メソッド・コンポジションレッスン 平面コンポジションの基礎』.株式会社大学教育出版,2011年10月20日,58p

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