油絵を描く時に気をつけるトラブルと解決法【変色して黄色くなった!?】

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皆さんは油絵を制作したあと何年か経って絵が黄ばんでしまった経験はないでしょうか? 

絵画制作には変色以外にも気をつけるべきトラブルがたくさんあります。

今回は油絵の制作で気をつけるべきトラブルと

そうならないための解決方法をご紹介します。

 

黄変

油絵の制作において皆さんが

最も体験しやすいトラブルの一つが

作品の黄変です。

 

読んで字のごとく作品の色が黄色っぽく変色する現象です。

特にリンシードオイルを使って制作した

白色の絵の具に現れやすいです。

あと、マンガンを含む濃色のシッカチーフは黄変を促します。

 

いわゆる「おつゆ描き」と呼ばれるように

水彩のように画用液(ペインティングオイルなど)をたっぷりつけて

少量の油絵の具を溶かし

キャンバスに絵を描くと

後で黄変が顕著に現れてきます。

 

しかし

画用液によって黄変を感じやすい

ホワイトであっても

画用液を使いすぎず

パーマネントホワイトやチタニウムホワイトなどで制作していれば

目立ったトラブルを実感することはあまりないと思います。

 

黄変の理由

油絵に使用するペインティングオイル

ポピーオイルなどの乾性油の黄変は

分子内構造変化発色団が作られることに

基づいているため黄変現象が避けられません

 

制作後の早い時期に暗い場所に置くと

さらに良くありません。

 

しかし

可逆性の構造変化なので

逆に作品を明るい場所に設置したり、

絵画面を穏やかに太陽に晒すことによって

その黄変を制作時の水準に戻すことができます。

 

乾性油ではなく

やや着色しかけたような

古いターペンタインを使っての黄変例があります。

 

ターペンタインはペインティングオイルなどとは違い、蒸発する揮発性の画用液です。

本来の揮発性がそこなわれて画面上に残存し、

それが重合して

発色団を持つ樹脂様物質に変化したものであると説明されています。

 

稀な現象のようですが

この事例になってしまうと元には戻せません

 

シルバーホワイトなどに使われている鉛白

ジンクホワイトの亜鉛華に比べて

黄変しやすいので

鉛白とリンシードオイルの組み合わせである

ファンデーションホワイト一番上の層に用いるのはよくありません。

 

シルバーホワイトやチタニウムホワイトに

亜鉛華が添加されていると

亜鉛華がその活性機能でもって

正常な酸化重合を妨げるので

本来酸化重合によって生じる黄変が紛らわされます。

 

しかし黄変対策としては有効ですが

亜鉛華を添加すると亀裂を招くため良い策ではありません。

 

ブルーイング

青味の白は黄色味の白よりも白く見えるため

その現象を利用して

白色に微量の青色を加え

黄変をごまかすという方法です。

 

主に塗料や染色業界で用いられるテクニックです。

 

 

 

黄変は経年したアクリル画でも認められますが

油彩画の黄変よりもはるかに

軽度なので一般的には問題にされていません。

 

珍しい例はシルバーホワイトを使用した作品の黄変です。

これは硫黄性ガスでの

ごくわずかな硫化物鉛生成によるもので

制作中には気づかれません。

 

一般にはその程度の硫黄性ガス環境の条件はありませんが

都市ガスに添加された

臭気付与剤での変色例

地下暗料工事での例があります。

 

硫黄温泉地域だとガス濃度が高いので

褐色から黒色になります。

 

温泉地域での作品の展示などは

絵の具に注意したほうがいいと思います。

 

亀裂

次に皆さんが遭遇しやすいトラブルが亀裂です。

作品の表面にひび割れが発生する現象で、

油絵以外にもアクリル画でも発生します。

 

塗膜自体が単独で割れる場合と、

重ね塗りをして上塗りの絵の具の塗膜が割れる場合があります。

一般的には塗膜が歪むことで亀裂が発生します。

 

単独で発生する亀裂

絵の具の極端な厚塗り

用いられた顔料の量が展色材に対して大すぎる場合

表面をわざと急激に乾燥させた場合

に発生します。

 

重ね塗りの亀裂

乾燥不十分な下の層の上に重ね塗りをした場合

油彩での亜鉛華(ジンクホワイト)基調絵具を使用した画面への描画

アクリル画においては

塗り重ね時に下の層の不都合な動きで起こります。

 

 

なぜ歪みや動きが発生してしまうのでしょうか?

その理由は・・・

 

絵の具は表面から乾いて固形化していきます。

固形化した表面は柔軟性に乏しいです。

 

高度な厚塗りでは

固形化に必要な時間が

表面と内面で大きく違うので

すでに固形化した表面の塗膜は

内部が固形化する際に伴う体積変化に

ついて行けないため亀裂が発生してしまうからです。

 

一番の対策は厚塗りしないことですが

どうしても厚塗りしたい場合は

全体を同じ速さで乾くように調整するか

画面の柔軟性を高めるようにします。

 

 

油絵の場合は制作環境の温度を維持したり、

アルキド樹脂のメディウムを使用します。

 

シッカチーフを過剰使用すると

強制乾燥により

亀裂ではなくチヂミの形で被害が現れます。

 

 

 

乾燥が不十分な下の画面への

重ね塗りによる亀裂は

上に重ねた絵の具の方が早く乾いたために発生します。

上の絵の具が固形化した後に

下の絵の具が乾くことは

厚塗りしたときの亀裂の発生原因と同じ構造になるためです。

 

油絵ではジンクホワイトでの亀裂例が極めて多いです。

ジンクホワイト以外にも

亜鉛華を使用した絵の具全般に発生する問題です。

 

絵の具のラベルに 「PW 4」

表示されていると

亜鉛華が含まれている絵の具ということなので注意が必要です。

 

もどり

一度乾燥したはずの塗膜が

柔らかくなり粘着性を帯びる現象です。

 

油絵では表面の乾燥した塗膜が

内部のまだ乾燥していない油

溶剤のために膨潤し

軟化することによって起こります。

 

絵の具全体が完全硬化した後だと起こりません。

 

 

原因は

  • 1度での極端な厚塗り
  • 空気流通不足や高湿度環境
  • 表面のみが乾燥した状態での作品の密閉梱包
  • 密閉額への収納

などです。

 

シッカチーフを過剰に用いた場合にも起こり得ます。

表面強固な密閉膜が形成されてしまうために内部が乾燥せず

いつまでも油の状態でとどまり

その未乾燥油が溶剤として働くことが原因となります。

 

乾性油と樹脂との混合物

特定の比率範囲内で強い粘着性を示します。

 

画用液の使い方によっては

画面がその粘着領域内に収まり

その結果粘着性が持続し

乾かないということにつながります。

 

一旦乾く過程を経て似たような現象が起こるのでこれも「もどり」とみなされています。 

 

吸着性のある顔料を用いた絵の具は

乾燥促進剤顔料に吸着されて

乾燥の効力が落ちるため

他の色の部分に比べてその箇所だけが

いつまでも乾かず

もどりと同じような現象が起こるとされています。

 

しかし

カーボン黒系絵の具

吸着性のある代表的な絵の具ですが

実際は

カーボン黒は顔料表面が強い酸性のため

乾燥が阻害されているのであって

カーボン黒の乾燥の遅さは

吸着性とは関係ないとも言われています。

 

ちなみにpHの低い酸性の顔料を

多量に用いた絵の具は総じて乾燥性が悪いです。

 

剥落

絵の具が剥がれ落ちる原因は

その画面のすぐ下の層への投錨拒否によって起こります。

 

間違った制作方法が一番の原因になります。

事故が起こった後だと

修復家のような専門家にしか直すことができません。

 

せっかく完成した作品が壊れると悲しいので

作家の皆さんは事故の起こらない画面づくりを心がけましょう。

 

投錨拒否

投錨(投錨効果)とは

絵の具が下の層にしっかりと食いつき付着することです。

 

投錨が不十分というイメージは

画鋲は壁には刺さります

ガラス面には刺さらない

ということのように考えると分かりやすいと思います。 

 

絵の具がしっかりと食い込まないと剥離の原因になります。

 

 

投錨拒否には主に5つの原因があります。

 

ナイフで平滑面を作った場合の投錨拒否

油彩下地と油彩による描画で起こる事例です。

ナイフで平滑画面を作ることで

成分の濃度匂配が起こり

表面近くの油分濃度が高まることで

剥落の原因になります。

 

面を粗く加工することによって防止することができます。

 

非吸収性面の投錨拒否

投錨せずに硬化して何年か経った後に剥離するもので 

ファットオーバーリーンの原則を

無視した制作で起こります。

 

ファットオーバーリーンとは
下層(下描きや描き始め初期の絵の具層)ほど 乾性油(リンシードオイルやポピーオイルなど)を 少なくして描き、 制作の後半になるほど 油の量を多くすることです。

 

下の画面の油分が豊富では

上に絵の具を重ねてもツルツル滑って絵の具が投錨できません。

 

これを防止するためには

下の層ほどオイルを少なく、

上の層ほどオイルを多くして描くことです。

 

一度完成して時間がたった油彩画ほど

油分が浸透しにくいので

描き加えたり

上から新しい絵を描く場合は

注意が必要です。 

 

内包水分での投錨拒否

アクリルジェッソやアクリル絵の具で描いた面への油彩描画には数年後に剥離した例があるそうです。

 

アクリルジェッソは速乾性なので

油絵を制作する人でも

下地に使用したり

下描きにアクリル絵の具を用いる人も多いと思います。

 

しかし

アクリル系の下地は

塗ってから数時間で制作に入れるほど表面が乾きますが

 

その時点ではまだ内部に水分が残っており

これが上から描く油絵具の浸透を阻み

油絵の具が深く投錨することができません。

 

 

制作した当初は

分からないかもしれませんが

数年後に

油彩面が完全に固まった後、

何かの衝撃できれいに剥離してしまうことがあります。

 

アクリル絵の具の上に油彩で絵を描く場合は

完全に水分が抜けてから描くようにしましょう。

 

表面異物での投錨拒否

主にジンクホワイトによる剥落の例です。

 

他には作品を保管する時に額に入れずに

むき出しの作品を何枚も重ねて保存している場合

上に重ねた木枠に水分が含まれていると

上のキャンバスを剥がした時に

下に置いていた作品の絵の具が

上のキャンバスの木枠と一緒に

剥がれてしまう場合があります。

 

下地による剥落

水をかぶった油彩画が目止め層から剥がれ落ちる場合

古い油彩画のキャンバスが脆くなって

画面が崩壊する場合があります。

 

これらは裏打ちによって救済できます

 

油絵専用のキャンバスに

アクリル絵の具を乗せた場合も剥離します。

 

 

混色時の化学反応による変化

絵の具は

単体では安定したものであっても

顔料の成分が異なる絵の具と

混合することによって

化学反応を引き起こし、別の物質に変わることがあります。

 

その結果、

制作した当初とは変わった色合いになります。

 

この事は変色と呼ばれます。

 

ほとんどの絵の具が

混色によって変色することはありませんが

絵の具のチューブに混色制限の記号が

書いてあるものは注意してください。

 

混色制限

混色制限とは

絵の具同士を混ぜ合わせたときに

顔料が反応して変色することを防ぐためのものです。

 

変色の可能性があるものには

チューブに注意表示の記号がつけられています。

 

混色による変色の回避に必要なことは

該当する絵の具を使用しないこと

作品を高温多湿下に置かないことです。

 

精製技術が未熟な時代でも

処理が適切にされているもの

変色していないそうです。 

 

現在はきちんと絵の具が作られているので

混色による変色は描き手に委ねられています。

 

 

もしも間違えて混色してしまった場合はどうしたらよいのでしょうか

 

  1. 混色して絵を描いてしまった30°以上の高温下に長く置かないこと
  2. 混色してしまった絵の具はテレピンやペトロールを多くして絵の具を溶かさないこと

 

1の理由は油絵具は高温になると

顔料同士の反応を促進させてしまうからです。

2の理由は

揮発性溶剤のテレピンやペトロール

顔料を剥き出しにして

反応しやすくさせてしまう恐れがあるからです。

 

では、どの様な絵の具同士が反応してしまうのでしょうか?

 

鉛系顔料と硫黄系顔料

硫黄の成分を持つ顔料が

何らかの理由で硫黄を放つことがあり

離れたイオウのことを

遊離イオウ

といいます。

 

これが鉛系顔料の鉛分と反応すると

硫化鉛ができて明るい色彩が暗くなります。

 

常温の保管ですと

週から月単位で淡褐色から暗褐色へと変化します。

 

全ての硫黄系絵の具が遊離するわけではありません。

 

特定の絵の具も

顔料の表面処理により

反応抑制や精製度向上によって

実際には反応が認められない

反応していても気づかないものが少なくありません。

 

使ってみたら意外と大丈夫ということもあります。

 

シルバーホワイトとバーミリオン

組成としては変色する組み合わせのはずですが

実際には変色しないそうです。

 

しかし

作品が自分の手を離れて

保管される場合もあると思います。

 

変色に当たる組み合わせは

絵の具のチューブに記号や注意書きで書かれているので意識して使用してください。

 

硫黄系顔料と銅系顔料

銅系顔料は

  • エメラルドグリーン(真正品)
  • マラカイトグリーン
  • アズライト

 

エメラルドグリーンは

ヒ素を含む材料ですでに製造されていません。

 

現在販売されているエメラルドグリーンの絵の具は全て他の顔料で作られています。

マラカイトグリーンは孔雀石を原料としたもので

主にテンペラで用いられ

油絵で使用される例はほとんどありません。

同じ名前の染料がありますが

全く異なる組成でできていて絵の具には使われていません。

アズライトは主にテンペラで使われていて油絵では

混色に関係なく画面上で経年変化するため

ホルベインではアズライトを用いた製品はありません。

 

絵の具としては販売されていないものばかりですが

石を砕いたり、

顔料を使用して

絵の具を自作しようと考えている人は注意が必要です。

 

普通の絵の具の混色では

起こらない反応ですが

銅粉硫黄系顔料の絵の具に混ぜるような使い方をすると起こってしまうので

 

オリジナルな作品作りがしたい中級者以上の人は気をつけてください。

 

ヒ素系顔料と鉄系顔料

現在販売されている絵の具には

ヒ素を含む顔料はないないため起こらない変色です。

 

もしそんな絵の具を手に入れたら

使用する際は注意が必要かもしれません。

 

昔はヒ素コバルトを使った

コバルトバイオレットライトのヒ素と

鉄系顔料の鉄分との反応による変色が取り上げられていました。 

 

酸化鉄を含む顔料(イエローオーカーやライトレッド)との混色を注意する考え方です。

 

しかし

昔言われていた変色は

顔料同士による反応ではなく

硬度の高いコバルト顔料によって

鉄製のペインティングナイフの表面が

削られて細かな鉄が混ざったことで

酸化鉄に変わり変色していたようです。

 

そのため普通の絵の具の使い方をする分には注意する必要はありませんが

 

絵の具を自作したい人や

オリジナルな使用方法を模索している人

道具を含めて成分に注意して

取り扱った方がいいかもしれません。 

 

ヒ素系絵の具

  • エメラルドグリーン(真正品)
  • コバルトバイオレットライト(ヒ素コバルト使用品)

 

鉄系絵の具

  • イエローオーカー
  • ローシェンナ
  • バーントシェンナ
  • ローアンバー
  • バーントアンバー
  • ライトレッドなど

 

ジンクホワイトと油

亜鉛華を用いた絵の具と油による変化です。

ジンクホワイトには亜鉛華が使用されています。

 

ジンクホワイト以外にも

ジンクホワイトと同じ亜鉛華の成分が含まれている絵の具を使用するときは注意が必要です。

 

亜鉛華は活性顔料なので

画面上で乾性油と反応して

別の物質を作ってしまいます。

 

その分が色素として消費されるので

白い色が弱くなり

色が暗く感じられるようになってしまいます。

 

20世紀前半の作品が暗化しているのはこのせいです。

 

ジンクホワイトをごく薄く塗り重ねた画面が経年により消えた例もあるようです。

 

絵の具自体は変色するような油と顔料の組み合わせで作られることはないので

絵の具自体に罪はありませんが

なかなか使い方の難しい絵の具です。

 

チョーキング(白亜化)

チョーキングとは

絵の具の固着成分が劣化・分解して

顔料が露出する状態になることです。

 

離れてみると全体的に白っぽく見える現象で

かつては

チタニウムホワイトを使用した時に

現れるとされていました。

 

現在のチタニウムホワイトは

昔のチタニウムホワイトとは

違う成分で作られているので

絵画制作では気にする必要はありません

 

塗膜表面の変化

絵の具を塗りたての塗った状態の色を

濡れ色

 

乾燥後の色を

乾き色

と言います。

 

濡れ色では顔料が

展色材(絵の具に含まれるオイルなどのこと)に

包まれた状態

表面が比較的なだらかになっています。

 

そのため

絵の具を塗った面全体光の直進性

妨げにくい形になっています。

 

それにより色彩の情報量が

少なくなるので全体的には暗くなります。

 

乾き色では

アクリルガッシュや

水彩絵の具、

日本画の絵の具が乾燥することで

水分が抜けて顔料が

画面の表面に露出した状態になっています。

 

この状態では

画面の表面が顔料で凸凹になっているような状態なのでの乱反射光が増し

作品を見たときに全体的に明るく感じます。

乱反射によって彩度は下がります。

 

 

油絵具の場合は濡れ色と乾き色の差が少ないです。

油絵の具は乾いても

展色材にオイル(乾性油)が使われているため水のように蒸発せず

画面の上に顔料とオイルの両方が残ります。

 

絵の具の顔料が画面表面に

露出しないため色の変化が少ないです。

 

しかし

下地の吸水性の違いによって

画面の状態が変わる可能性があります。

 

油絵で

思ったようなツヤにならなかった場合などは

専用のオイルを塗ることでツヤの調節ができます。

 

 

はじき

絵の具の上に絵の具を重ねたり

ワニスを塗ったりした時に

下の画面に馴染まない状態のことです。

 

水滴のように絵の具やオイルが付着します。

 

制作時のはじきは完成後に

亀裂が起こる原因になります。

 

ルツーセを含ませた筆で塗ることで

はじきが発生した画面にも

絵の具を乗せることができるようになります。

 

ブリード

下地に塗った絵の具の色が

上に塗った絵の具に滲み出てくる現象

ブリード(泣き、にじみ)と言います。

 

特定の有機顔料を使用した絵の具に見られ

顔料製造時の成分残滓や顔料化不十分が原因とされています。

 

無機顔料であっても

真正バンダイキブラウンなどのように

水や油に溶けやすい有機顔料を含む色も

上ににじみ出すことがあります。

 

ブリードが発生する色は

  • アリザリン顔料 PR83
  • トルイジン赤 PR3
  • リゾール赤 PR49

 

クサカベの絵の具には

チューブに使用されている顔料の名前が書かれているのでそこを確認してみましょう。

 

ブリードの防止策は

その色を下層に使用しないことです。

 

どうしても使用したい場合は

乾燥後にフィキサチーフを施せば

十分でないまでもそれなりの効果が得られるそうです。

 

ブリードのテスト方法
①キャンバスの切れ端に試験対象色を塗布

②ホワイトを上から塗り重ねて放置

③経日の色を観察する

④ホワイトが何らかの色になれば対象色はブリード色である

 

乾燥不良

油絵の制作において誰もが必ず実感する問題が渇きの遅さです。

乾きが遅いから油絵をやらないという人もいます。

早く作品を完成させようと

シッカチーフという速乾を早める画用液を使用して制作する方も多いでしょう。

 

油絵の具は酸化重合によって乾く素材なので

暖かい環境の方が早く乾きます。

 

冬よりも夏の方が乾燥が早い傾向にあります。

 

冬場は部屋が寒いからと言って

ドライヤーやストーブ、カイロなどをキャンバスの裏に貼って乾燥を速めようとすると

部分的に温度が上昇してしまい

均一に乾燥することができないので

画面の歪みを引き起こす可能性があります。

 

ストーブなどに制作面を向けて乾燥させようとすると

表面だけが早く乾燥し

「もどり」を引き起こす可能性があります。

 

床暖房や電気カーペットの上に

作品を寝かせておく方法であれば

作品全体の温度を上昇させることができるので比較的安心して乾燥を速められます。

 

私も実践している方法ですが

小さい作品であれば

一人用の電気カーペット(40cm×40cmくらい)の上に作品をおいて温めています。

 

一人用の電気カーペットは制作中は自分で使用しますが

休憩時や就寝時に作品を乗せています。

(実践する時は付けっぱなしの火事には気をつけてください!!)

 

正直、本当に乾燥が早くなっているのかは

時間を計って実験したことがないので分からないのですが

 

焦っていて締め切りまでに時間が無い時は

藁にもすがる気持ちなので

やらないよりマシの精神で実行しています。

 

速乾剤を使わなくても

翌日には画面表面が触れるくらいには

乾いていたので

少しは効果はあるかな・・・と思います。

 

作品の裏面を太陽光に当てて

放置する方法もあるようですが

この場合は絶対に

作品表面は日光に当てないでください。

 

人体への影響

昨今流通している絵の具は

どのメーカーも人間への健康を考えて

安全な原材料を使って作られています。

 

しかし、絵の具は食べ物ではないので

当然口に入れたり

目に入ったりすることのないように

取り扱うことが大切です。

 

①口からの摂取

の具がついた指でおやつを食べたり、

爪の間に絵の具が入った状態で

料理をするのは避けましょう。

 

②吸入

油絵の制作で使われる揮発性溶剤

ヘモグロビンと直接結合して

体内の各器官に運ばれます。

 

テレピンは

頭痛やめまいを引き起こす可能性があるので

自宅をアトリエにしている方は注意が必要です。

アトリエは換気を心がけましょう。

 

③眼

眼球には吸収能力はありませんが

絵の具のついた手で目をこすったり、

画溶液の飛沫が付着しないように注意してください。

 

④皮膚吸収

皮膚の毛穴や傷口から吸収されることです。

顔料の粉末や

絵の具自体は

材料が大きいので

皮膚吸収はされませんが

素手で扱った時などは作業後に手洗いをしてください。

 

有害性のある材料

急性中毒としてではなく

長い期間を経て慢性中毒として現れるのが一般的で、

使用時に注意していればほとんど問題ありません。

 

⑤アレルギー

上記のような経路で取り込んでしまった物質によって起こる反応です。

人によってアレルギー体質は一様ではありません。

油絵では有機溶剤に基づく事例が時々あります 。

 

私も冬場に何日もアトリエに籠って制作をしていた時は

頭痛や気持ち悪さがしたことがあります。

 

おそらく揮発したテレピンなどの

画用液や洗浄液が原因だと思われます。

皆さんも換気には注意してください

 

火災

油絵の画材には

しばしば火気厳禁とラベルに書かれているものを見かけると思います。

 

実際に美術予備校で真夏

溶剤の染み込んだ紙や布を捨てているゴミ箱から発火したという事例もあるようです。

 

これらの危険は

火の近くに道具やゴミを置かない

ゴミを捨てる時は上から水をかけておく

などの配慮で避けられます。

 

まとめ

今回は油絵の制作に関するトラブルとその注意点を中心にお話ししました。

販売されている道具で普通の油絵を制作する場合は

特に注意する必要はないかもしれませんが

油絵に慣れてきて

オリジナリティのある作品を作りたい

新しい技法や道具を試してみたい

と思っている人には思い当たるトラブルもあったかと思います。

 

油絵は制作中が楽しいというのもありますが

完成後の作品を眺めたり、

展覧会に出品したりと完成後の人生(絵生?)が作品にもあります。

作品とともに長く歩んでいくためにも

一生懸命作った作品が長く保存できるように心がけて制作したいですね。

 

参考文献

書籍

ホルベイン工業株式会社.ホルベイン工業技術部編.『絵具の辞典』.中央公論美術出版,平成8年,277p

桑原利秀 安藤徳夫 共著.『顔料及び絵具 改訂版』.共立出版株式会社,昭和28年,222p

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