鈴木祐 著の
「4021の研究データが導き出す最高の職業の選び方 科学的な適職 」
という本から絵を描くという事がどのようなものなのかを画家の視点で考えてみました。
創作活動を仕事にしている人
これから創作活動を仕事にしたい人
とにかく制作活動がしたい人
にとって作家活動に一歩踏み出す勇気が出る本だと思いました。
もくじ
「科学的な適職」とはどんな本?
「4021の研究データが導き出す最高の職業の選び方 科学的な適職 」
は職業選びにおける大切なことが書かれています。
元々はアーティストのための書籍というよりは
一般的なビジネス書になります。
転職活動を考えている人や
これから就職活動していく学生が読むとためになると思います。
この本のミソになる部分は幸福度という部分です。
仕事を選ぶ時には
その人にとって大切なことを基準に
考えて行動しているはずなのに
意外とその仕事をすると自分は幸せかは考えられていないない部分なのです。
その幸福度とは一体どのようなものなのか
お金なのか
やりがいなのか
自分にとっての幸福とは何なのか
自分は何を基準に仕事を選ぶと幸福度が上がるかをこの本を読むことで探っていくことができます。
仕事選びに必要なポイントだけでなく
自分自身の現在の仕事に対する幸福度のチェックや
転職や就活における重視するべき必要な項目を「分析」して確認することができます。
他にも今、働いている職場が
自分にとって幸福かどうかを判断する
「最悪の職場に共通する8つの悪」という項目もあります。
アルバイトをしている学生や就職した社会人の皆さんには
あーなるほど
と思うことがたくさんあると思います。
画家は「仕事の幸福度を決める7つの徳目」に最適
「科学的な適職」には
仕事の幸福度を決める7つの徳目というものがあります。
この項目を見て私は作家活動はまさに
自分の幸福度を最高に高めていると感じました。
私は大学を卒業してから就職をして会社員をしながら制作活動を続けていました。
もっとたくさん絵が描きたい
という思いから作家という仕事にフォーカスして
どうやったら作家として生きていけるかを考えました。
そして転職をし、その後転職先の職場も退職し作家として生きていくようになりました。
私の視点から作家活動の幸福度を解説していきます。
徳目① 自由 仕事内容や働き方に裁量権があるか
裁量権があるかということは
例えば
次にBの作業をやって
ここでこの作業をしなければならない
ブルーの色でアイデアを出してください
という風な仕事内容になっていないか、ということです。
本当にAの作業を最初にやらなければならないのか
Bの作業から始めてもいいのか
始める作業はAでもBでも構わないはずなのに
なぜかしてはいけない、と順序が決められている
とか
こういう形はどうですか?という提案はできず
あなたは営業の持ってきた意見を形にすればいいんだよ
という風に言われてしまうと仕事に楽しさを感じなくなってしまいます 。
制作活動の裁量権を考えてみると
朝は何をして
どんなことから仕事をスタートするか
どんな作品をどんな大きさで作っていくか
どんな色でどんなテーマで描くか
ホームページを更新するのか作品写真を撮るのか
その日の仕事スケジュールは作家の思いのままです。
徳目② 達成 前に進んでいる感覚を得られるか
どんなに小さくても達成感が得られるかどうかということです。
データを入力していく仕事にしても
そのデータが果たしてどんな効果を発揮しているのか
このデータを入力していくことで
誰かに
何かに
変化が起こっていると実感できる
場合と
何も反応がないけれど、とにかく記録だけしておいてと
同じ作業を延々と繰り返していくだけでは
仕事をする人の気持ちは全く異なってきます。
制作活動は作品が昨日より進んだかどうかは一目でわかることですし
作品が完成すれば完成する枚数が増えるほど
自分が成長しているようにも感じます。
展覧会を開く
お客さんの反応を知る
作品を購入していただけた
などいくつもの達成感が直接味わえます。
徳目③ 焦点 モチベーションタイプに合っているか
自分の性格特性にその仕事があっているかということです。
モチベーションタイプ(性格特性)は攻撃型と防御型に分かれます。
攻撃型は
最高の状態を想定して、いち早くやるタイプ
失敗するかもしれないけど新しいことをどんどんやりたい
誰もやっていないことに挑戦したいという人
防御型は
最悪の状態を想定してリスクを避けようとするタイプ
もし、それをやって悪化してしまったらどうするの?
失敗して今より悪い状態になってしまうなら
現状維持もありと考えて積極的な変化を望まない人
モチベーションタイプの違いによって向いている職業の方向性もう違います。
どちらが良いとか優れているというものではありません。
アーティスト、テクノロジー系 、コンサルタント
事務員、データアナリスト、弁護士
画家志望の方は攻撃型の性格特性の人が向いている職業ということになります。
私自身も性格的には攻撃型が強いのかなと思いますが
防御型も少しあるなと感じています。
何か新しいことを始める時や転職する時などは失敗したらどうしよう
とか転職したらもっと悪い環境になるかもしれないと考えていました。
しかし防御型と攻撃型の二つの面の
最後の一線を越えて攻撃型特性の方に傾いたので
私はやや攻撃型よりの性格特性を持っているのかなと思いました。
皆さんも両面を持ち合わせているかと思います。
しかし画家は新しい作品をどんどん生み出していく職業です。
改良に改良を重ねてさらに良い作品を作り上げていく姿勢が
お客さんを楽しませる展覧会を作るポイントだと思っています。
そのため
常に成長意欲を持った人や新しい挑戦に貪欲的になれる人が適している職業だと思います。
徳目④ 明確 なすべきこと、 ビジョン、評価軸が明確である
自分の仕事内容がはっきりしていること
何のために自分がこの作業をしているのか
などが分かっていることです。
上司に嫌われたら左遷される
気に入られたら昇進するという状況では困ってしまいます。
賃金が公平であることも大切です 。
私のなすべきことは絵を描くことで
絵を見る人を直接喜ばせることです。
絵画というものが人の生活に喜びをもたらすツールだと信じているからです。
画家の評価軸については
アートそのものの評価というのは見る人の感性による部分が大きいので曖昧な部分が多いですが
年間の制作枚数が去年よりも増えた
展覧会の来場者数が増えた
作品の購入者数が増えた
など様々な要素で自分を評価することができます。
「画家」を仕事にしていくと様々なゴールが存在します。
賃金に関しては画家の仕事は不安定です。
しかし展覧会は数年かけて継続していくことで
売り上げは伸びていく人が多いです。
私が百貨店で継続して展覧会に参加し始めた頃に
先輩に言われた言葉で大切にしていることがあります。
その先輩は
「私はこれまで百貨店で展示をしてきて
他の作家さんを何人も見てきたけれど
みんな毎年売り上げが良くなっていっているから
最初から売り上げが伸びなくても心配しないで。
伸びていく角度は人それぞれだけど、
売り上げがどんどん下がっていく人は見たことがないよ。」
と言っていました。
確かに一回一回の展覧会の結果で一喜一憂していると
気がつかないこともありますが
私の売り上げも年間を通して全体で見てみると
一年間の売り上げは確かに上がっていました。
クリエイティブな仕事以外でも
フリーランスで仕事をする人はご存知のことと思いますが
仕事をフリーで始めようと思っても
いきなり売り上げが順調に行く人は少ないと思います。
独立していく人も初めは会社員として働きながら副業としてスタートし
軌道に乗ってきた段階で独立するという人が多いと思います。
画家の収入は成功報酬なので
絵を描いただけでは収入にはなりません。
作品を発表して購入者が存在して初めて収入になります。
しかし継続により少しずつ絵を見てくれる人が増えていきます。
自分の絵を好きだと言ってくれる人が増えていくことで
結果的に売上も増えていくことになります。
徳目⑤ 多様 作業内容にバリエーションがある
一つの内容の仕事をずっと続けるのか
様々な業務内容を行うのか
その違いで仕事に対する満足度は変わってきます。
ライン作業のように一人一人が役割を分担して作業をこなすことで
全体の仕事の効率は良くなります。
しかし
分業制でひとつの仕事だけを続けていると
作業をしている人の満足度が下がってしまうのです。
同じような仕事内容ならもっと給料が良い職場に行きたい
この仕事しか任されないけれど同じ作業をずっと続けていて将来の自分はどうなるんだろう
数年前の自分と何も成長していないのではないか
と思ってしまいます。
仕事の幸福度には内容のバリエーションは大切なのです。
制作活動のバリエーションは多岐にわたります。
画家は絵を描くだけじゃないの?
と思うかもしれませんが
画家にもたくさんの仕事があります。
- ホームページを作成して作品画像を掲載
- SNS の更新
- 展覧会の DM を作成し印刷会社に入稿
- 展覧会で必要な作品情報などを会場に送信
- 作品発送の運送会社や作家が会場に在廊するための交通機関や宿泊施設の手配
- 来場者への接客
- 芳名帳のデータ入力
- 確定申告
などなど細い事務作業はたくさんあります。
もちろん全てが楽しい仕事というわけではありませんが
作品の制作から発表までに必要なことはすべて自分で行います。
徳目⑥ 仲間 組織内に助けてくれる友人がいる
職場内に友人が3人いるかどうかで人生の満足度がかなり変わります。
もらえるお給料が同じでも
会社に友人がない人と3人以上いる人とでは満足度が異なるそうです。
仕事としてこの会社に来ているだけだから友人とは違う
と思わずに同じ組織の人で共通点がある人とは仲良くなることで精神衛生上も良いようです。
私の場合は一人で黙々と絵を描いていた頃は
学生時代の友人以外で絵を描いている友人はいませんでしたが
積極的に作品を発表し続けることで多くの作家と出会い
たくさんの話を聞き、展覧会会場で一緒に過ごすうちに
展覧会で会うのが楽しみになりました。
SNSで近況を知るたびに私も頑張らなければとやる気が出ます。
徳目⑦ 貢献 どれだけ世の中の役に立っているかわかる
自分の仕事が人のためになっているかということです
誰の役に立っているのかが明確でない仕事はつらいです。
たとえもらえるお金が多くても無意味に思える仕事では長続きしません。
人には
自尊心
親密感
自律性
の三つの欲求があります。
人のために何かをするということはこれらの欲求を満たす行為なのです。
絵を描くという事は一見
自分のための仕事のように思えますが
この仕事も多くの人と関わる仕事です。
展覧会の会場スタッフ
ギャラリーのスタッフ
会場を訪れるお客さん
自分が一生懸命、絵の仕事をし
展覧会を成功させることが出来れば多くの人の役に立つことにつながります。
売上が上がればスタッフの人の喜びに
良い絵が描ければお客さんの喜びに繋がります。
まとめ
絵を描いていると大変な事や不安に思う瞬間もありますが 改めて考えてみると絵の仕事はとても幸福度の高い仕事なんだと思えました。
私も自信を持って制作に打ち込めるように頑張りたいと思います。
面白くてためになる本なので興味のある人は是非読んでみてください。