【画家の出発点】眠れない夜が絵の世界に導く

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昔から寝つきの悪い子供でよく母を困らせていました。

小さい頃は少しアトピーっぽく、体が痒くて眠れず
毎日、母に擦ってもらいながら寝ていました。

 

 

痒みが無くなってきた年頃になっても
寝つきの悪さは相変わらずで

目を閉じて過ごしたところで寝られるわけでもなく
布団の中で何もせずに3時間以上じっとしているのは
とても苦痛でした。

 

小学校4年生の頃だと思いますが
家族が寝静まった中
デジタル時計が日付を変える瞬間の
文字の動きを観察するのが日課でした。

当時は家族で和室に布団を敷いて寝ていたのですが

あまりにも夜が暇すぎて

その時間に耐えられなくなると
ついに家族に内緒で布団を抜け出すようになりました。

 

和室を出て自分の部屋に入ると
小学校入学の際に買ってもらった勉強机の前に座り

A4のコピー用紙と鉛筆を手にしました。

家族を起こしてしまわない遊びは限られていて
今のようにインターネットができるわけでもなく
ゲームのような音の出る道具も使えず、

子供の私が自由に使えるのは紙と鉛筆だけでした。

 

学校の授業以外で絵を描くことは
ありませんでしたが

それでも図工の授業は一番好きでした。

 

 

でも紙と鉛筆を手にしたところで描きたいものも無い・・・

 

そもそも「自由に」お絵かきが苦手で
幼稚園も小学校も自由帳を使うのは
最初の2ページくらい。

ほぼ、真っさらな状態でした。

 

しかし、描かなければこの膨大な夜を越えられない。

 

そこで家にある「絵」を見ながら
描いてみようと思い至りました。

残念ながら我が家に美術的な要素は何もなく画集もない
あるのは絵本か図鑑か、おこづかいで買った漫画だけ。

漫画の中のキャラクターは白黒で
白い紙に黒い輪郭線によって
描かれているため鉛筆一本で
自分も試すことができる。

 

色が沢山ある絵本より始めやすかったのです。

 

なぜかおとなしく模写をしていませんでしたが
目の描き方、髪の表現方法など部分的に
参考にしながら自分なりの形で人物を描く。

 

勿論うまく描けないが何度も描き直して
白い紙を贅沢に使うことが楽しかったです。

自分の理想の形に近づけようとするのは時間を忘れられるひと時でした。

 

この時初めて
絵は頭の中で思い描く想像の世界を
形にできるツールだと知りました。

 

 

もう早く寝なければという思いは捨てました。

 

開き直って眠たくなるまで絵を描きます。

完成させようとは思っていないので
自分の納得できるまで描く、
自分の描きたいところだけ何枚も描く、

やり切った達成感と共にもう一度布団に戻る。

 

コピー用紙が机の引き出しいっぱいに溜まる頃には
夜眠れないことを悩まなくなりました。

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