今回は油絵の白の絵の具についてお話しします。
初めて画材店に入った方は
たくさんの種類の白色の絵の具に
どれを選んで良いか迷ってしまうと思います。
サンプルを見ても全部同じに見えてしまうこともあると思います。
そんな方におすすめの
「初めて選ぶ白」のご紹介と
ホワイトの絵の具の種類について解説します。
中級者以上の方には
自分が使用しているホワイトはどんなものか
自分に必要な好みのホワイトは何色か
知る手がかりになればいいなと思います。
もくじ
白はどんな存在?どんな役割?
油絵具のホワイトはとても大きな役割を持っています。
皆さんも小学校や中学校で使った水彩絵の具は
白色の絵の具がすぐに減っていったのではないでしょうか。
油絵具のホワイトは
色を薄める
明度を上げる
隠蔽する
トーンを落とす
ベースの色にする
など様々な用途で用いることができます。
ホワイトに使われる顔料は
白色度が高いこと
不透明性が高いこと
色相として無彩色であること
が求められます。
白色度
白さの度合い。
白色絵の具の塗膜の反射率により表示。
数値が大きければ大きいほど白い。
着色力
二つ以上の顔料を混ぜ合わせた場合
ある一つの顔料の色が他の顔料の色にどの程度影響を与えるかという能力。
隠蔽力
顔料や絵具による下の層の色を覆い隠す能力。
黄変度
絵の具の乾燥塗膜の黄ばみの度合い。
そしてホワイトに使用される展色材の油としては
黄変しにくいポピーオイル(けし油)が使用されます。
展色材とは絵の具を作るときに顔料(色の粉)と混ぜ合わせる糊のような存在です。
顔料(色の粉)+糊(油)を練り合わせることで
チューブに入っているような油絵の具が出来上がります。
下地用のホワイトには
堅牢性を高めるためにリンシードオイル(アマニ油)が主に使用されます。
速乾性を高めたホワイトにはアルキド樹脂が使用されています。
初めて選ぶホワイトのオススメ
初めて油絵の具を買う人は
パーマネントホワイトか
チタニウムホワイトを選ぶといいと思います。
- 何を描くかまだ決めていない
- どんな描き味か全く想像がつかない
- 何を選んだらいいかさっぱり分からない
- 買ってみて使いづらかったら困る
という人はパーマネントホワイトを選ぶといいと思います。
パーマネントホワイトは突出した長所がない代わりに欠点もないホワイトです。
欠点がないというのが最大の長所でもあると思います。
ホワイトの中ではオールマイティな存在なので
絵の具の特性を学んでいなくても
下描きから上描きまで使用でき、
間違いが起こりづらいです。
- 油絵らしくこってり厚塗りがしたい
- たぶんうまく描けないから上から塗り直してやり直しができる絵の具がいい
という人はチタニウムホワイトを選ぶといいと思います。
パーマネントホワイトで物足りなさを感じる人は
チタニウムホワイトを使用してみると
強さを実感できると思います。
ちなみに私はチタニウムホワイトを使用しています。
理由は圧倒的に強い隠蔽力と強い耐久性があるからです。
ホワイトの種類を解説
それではそれぞれのホワイトの特徴を見ていきましょう。
絵の具の表示や成分は
ホルベインのカタログと
ホルベイン工業技術部編の「絵具の辞典」を参考にしています。
パーマネントホワイト
オーソドックスなホワイトで
油絵の具セットに入っている白い絵の具はたいていこの色です。
適度な着色力と隠ぺい力があり
イメージとしては「普通の白い絵の具」といった感じです。
名前の由来は永久不変色の意味からです。
ホルベインのパーマネントホワイトにはSFとEXのシリーズがあります。
どちらも同じパーマネントホワイトですが
使用されているオイルが違います。
SFにはポピーオイル
EXにはサフラワーオイル
サフラワーオイルはポピーオイルより原材料の価格が安いため
EXは入門用に作られたシリーズです。
クサカベのパーマネントホワイトも
スタディパーマネントホワイトはサフラワーオイルで習作用として安価に販売されています。
ジンクホワイトの亀裂や剥離
チタニウムホワイトの強すぎる着色力
これらを改善するために生まれたホワイトです。
通常のチタン白顔料よりも粒子の小さい顔料を使用しており
着色力や隠蔽力が低くなるように作られています。
下描きから上描きまで使用できます。
展色材・・・ポピーオイル
耐光性・・・絶対堅牢
乾燥度・・・やや遅い
透明性・・・半透明
混色制限・・・なし
毒性・・・なし
画面保存・・・特になし
白色度・・・高い
着色力・・・やや高い
隠蔽力・・・やや高い
黄変度・・・低い
粘度・・・適度な練り調子
ジンクホワイト
透明感のある青みがかったホワイトです。
混色しても白っぽさが邪魔をせず美しい色ですが使用方法には注意が必要です。
名前の意味は亜鉛の白。
19世紀以降に油絵の具の白として活躍してきました。
顔料の粒子は小さく
絵の具になる際に展色材(ポピーオイルなどのオイルのこと)
が多くなる傾向にあります。
乾燥はシルバーホワイトより遅いです。
顔料の結晶形態が球形に近いため滑らかな絵の具です。
ジンクホワイトを下塗りや中塗りに使用しないことが大切です。
ジンクホワイトの上に絵の具をのせると
亀裂や剥離の現象が起きて作品が破損してしまいます。
その原因は
顔料である亜鉛華(あえんか)が
乾燥の過程において乾性油(ペインティングオイルなどの画用液のこと)
と反応して金属石鹸が生成されるからです。
この時の塗膜の動きが絵の具の亀裂になり、
生成した金属接点が上に塗られた絵の具の付着性を阻害して剥離現象が起きます。
この亀裂や剥離は阻止不可能であると言われています。
ジンクホワイトに別の色を混色しても防げないそうです。
そしてジンクホワイトは透明性が高いため
隠蔽を目的とした技法には不向きです。
仕上げなどの上描きに使用しましょう。
展色材・・・ポピーオイル
耐光性・・・絶対堅牢
乾燥度・・・やや遅い
透明性・・・半透明
混色制限・・・なし
毒性・・・なし
画面保存・・・絵の具の層間剥離あり。ワニス掛けと静置
白色度・・・普通
着色力・・・弱い
隠蔽力・・・弱い
黄変度・・・低い
粘度・・・やや粘りあり
シルバーホワイト
愛好者の多いホワイトです。
しかし、鉛化合物を含むため取り扱いには注意が必要です。
フレークホワイトという名前で販売されている場合もあります。
名前の由来は銀のように輝く白という意味からきています。
19世紀まで油絵の具の白として活躍しました。
顔料の粒子は大きく、絵の具化の際に展色材が少なく済み
顔料が乾燥促進剤としての機能も持っているため
比較的乾燥の速い絵の具です。
顔料である鉛白の結晶が扁平状であるため
画面の亀裂が少なく
昔から強固な画面を作る絵の具として信頼されてきました。
シルバーホワイトは油が少ないため
速乾性が早く下描きや中描きに使用されます。
絵の具自体に粘りがあるため盛り上げの表現も可能です。
混色の場合はジンクホワイトについで着色力が弱いため綺麗な色を作ることができますが
黄色や赤みに色相が傾く傾向があります。
メーカーが出しているホワイトの混色カラーサンプルでも
他のホワイトに比べてやや黄色味を帯びているのが分かると思います。
シルバーホワイトは鉛系の顔料であるため
鉛と反応する危険性のある顔料との混色については注意が必要です。
この事を混色制限と言います。
ホルベインのシルバーホワイトは
混色制限にS表示が付けられており
N表示がついた絵の具との混色は避けてください。
鉛系の顔料は
硫黄系の顔料と反応し
硫化物を生成し黒く変色します。
硫黄系(N表示)の絵の具は
- コバルトブルーヒュー
- ウルトラマリンライト
- ウルトラマリンディープ
- ミスティブルー
- ブルーグレイ
- バイオレットグレイ
があります。
シルバーホワイトに含まれる鉛白は鉛毒を有しています。
- 絵の具を直接傷口につけない
- 爪の間に絵の具が入ったまま料理をしない
- 画面をサンドペーパーで削る場合は防塵マスクや帽子を着用する
上記のように注意してください。
シルバーホワイトの黄変を防ぐためには
画面を明るい風通しの良い場所に出します。
黄変を防ぐためにシルバーホワイトと
卵と白色顔料で練ったテンペラ白の絵の具を
混合して絵の具の油の量を抑えるという方法もあるそうです。
大気中の硫黄ガスとの反応により
黒変化の可能性も大きいので
画面には6か月の乾燥期間をおいて
ガスを遮断できるタブローワニスを塗布するのが理想です。
展色材・・・ポピーオイル
耐光性・・・堅牢
乾燥度・・・早い
透明性・・・半透明
混色制限・・・硫黄系絵の具と注意
毒性・・・あり
画面保存・・・ワニスをかけ、明るい場所に保管
白色度・・・普通
着色力・・・弱い
隠蔽力・・・やや強い
黄変度・・・やや高い
粘度・・・粘りが強い
チタニウムホワイト
個人的な意見ですが慣れてくると万能感を感じるホワイトです。
隠蔽力が他のホワイトに比べ
最も強く不透明な絵の具のため、
下の絵の具を隠したい場合の塗り直しに適しています。
名前の由来は顔料のチタン白の意味です。
20世紀に開発され広く用いられています。
顔料粒子は小さく
絵の具化の際に展色剤を多く使用しています。
そのため絵の具は若干柔らかいです。
顔料が不活性であるため、
絵の具の乾燥塗膜は油の性質が強く残り柔軟性があります。
このことは耐久性の面から見て湿度や物理的損傷にも強いといえます。
しかし展色材が多いので乾燥が遅い欠点もあります。
白色度や隠蔽力が大きいため
少量のチタニウムホワイトで
他の色と混色しても十分に白で色を薄めることができます。
しかし、使用量に注意しないと色が濁るという欠点になります。
そのためチタニウムホワイトは
白が強すぎるからあまり使うべきではない
という作家さんも存在します。
私は慣れや好みの問題でもあると思うので
初めからチタニウムホワイトの混色に慣れていると気にならないと思います。
下描きから上へ書まで使用することができます。
展色材・・・ポピーオイル
耐光性・・・絶対堅牢
乾燥度・・・やや遅い
透明性・・・不透明
混色制限・・・なし
毒性・・・なし
画面保存・・・特になし
白色度・・・高い
着色力・・・大変強い
隠蔽力・・・大変強い
黄変度・・・低い
粘度・・・腰の切れが良く、若干柔らか
チタニウムホワイトを混ぜると
白なのに濁るとはどういうことなのでしょうか?
白が強すぎる
と感じる人がいるのは
どういう原理でそう感じるのでしょうか?
緑+ホワイト
赤+ホワイト
などで混色した場合
元々の緑や赤の色の鋭さ(鮮やかさ)はなくなりますが
ホワイトを混色してできた
パステルトーンの色は明度が低くないため(暗い色でないため)
それほど彩度(鮮やかさ)が
低下しているように感じないと思います。(明度効果)
しかしホワイトを大量に混ぜると
ホワイトは光の成分をすべて均等に反射するため
実は彩度が下がっています。
つまり色が鈍くなるということですが
上記の明度効果で彩度(鮮やかさ)が
下がっていても気がつきにくいのです。
混色の際にチタニウムホワイトを敬遠するタイプの人は
白による色の濁りを
敏感に感じ取っているということかもしれませんね。
ちなみに
チタニウムホワイトや
プルシャンブルーは
狼色(おおかみいろ)とも呼ばれます。
いわゆる「他の色を食う」性質を持った色です。
他の色とチタニウムホワイトを混ぜた時に
想像以上に白っぽくなってしまったことはないでしょうか?
少量の絵の具で思った以上の効果を持ち
想定外の色に仕上がったり、
色を濁らせてしまうおそれのある色は
この様に呼ばれることがあります。
セラミックホワイト
ホルベインが生み出した新しいホワイトです。
ジンクホワイトのように青みがかったホワイトでありながら
適度な隠蔽力があり耐久性も保たれた絵の具です。
名前の由来は顔料の汎用名である
ニューセラミックス(新しい焼き物)からきています。
1990年に特許取得し、同年10月より販売開始された絵の具です。
顔料粒子の大きさはチタン白と同程度ですが
屈折率はチタン白に比べると透明性があります。
チタニウムホワイトは
ジンクホワイトの隠蔽力の9.2倍
着色力は8.3倍とされていますが
セラミックホワイトは
隠蔽力は2.4倍
着色力は2.2倍という数値になっているそうです。
セラミックホワイトの最大の特徴は
青みがかった白であるということです。
青色白色度は81.6で 他のホワイトと比較して大きい度合いです。
青みを帯びた白の代表格であるジンクホワイトは79.4
シルバーホワイトは77.7
チタニウムホワイトは77.0です。
ホワイト単色で見た場合
私たちは白に青が入っていると感じるよりも
より一層白い白さを感じます。
和紙のような白というよりも
コピー用紙のような真っ白に近いと思います。
黄変性も低く白色を維持することができます。
他のホワイトよりもお値段が少し高いのが欠点ですかね。
下描きから上描きまで使用できます。
展色材・・・ポピーオイル
耐光性・・・絶対堅牢
乾燥度・・・遅い
透明性・・・半透明
混色制限・・・なし
毒性・・・なし
画面保存・・・特になし
白色度・・・普通
着色力・・・やや強い
隠蔽力・・・やや強い
黄変度・・・低い
粘度・・・やや硬く粘りがある
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番外編 クイックドライングホワイト
ホルベインから発売されている絵の具で
名前の由来はスピーディーな乾燥性から来ていて速乾性白という意味です。
速乾機能を持たせるためにアルキド樹脂を使用しています。
さらに顔料に対する展色材の量を減らしています。
そのため絵の具の粘度増加は避けられないので
溶剤の添加により描画性能が維持されています。
絵の具全体の油分の低さから
黄変性の低いものになっています。
私は使用したことがないのですが
厚く塗ってもシワなど入らずしっかり固まるそうです。
薄く塗れば4~6時間程度で乾燥します。
下塗りの際にとても役に立ちそうですね。
画肌はつや消しの少しざらつきのある画面になりますが
これにより重ね塗りする絵の具の安定した付着性となります。
着色力も弱いため混色した時に綺麗な色を作り出すことができます。
注意点はクイックドライングホワイトは
乾きが早いため
乾きの遅い絵の具の上に
この絵の具を乗せてはいけないということです。
重ねていく絵の具の乾燥速度が違うと
亀裂を発生させる原因になるからです。
固着成分が少ないので
テレピンやペトロールでゆるく溶いて
厚塗りすることも亀裂の原因になります。
乾きの遅い絵の具と混ぜると
その絵の具を早く乾燥させることができます。
この絵の具をポピーオイルをベースにした画用液で溶くと
速乾性が損なわれたと感じる場合があります。
展色材・・・アルキド樹脂+ポピーオイル
耐光性・・・絶対堅牢
乾燥度・・・早い
透明性・・・半透明
混色制限・・・なし
毒性・・・なし
画面保存・・・艶引き傾向のためワニス引き
白色度・・・やや高い
着色力・・・弱い
隠蔽力・・・弱い
黄変度・・・低い
粘度・・・適度な練り調子
番外編 トランスペアレントホワイト
ウィンザー&ニュートン社から販売されている透明なホワイトです。
チタニウム系のホワイトで
ジンクホワイトと比べて着色力が弱く、
透明度がより高い白です。
色調の混在、グレージングに適しています。
透明度と隠ぺい力を必要としない描写方法に向いています。
乾燥速度は中程度です。
明度効果が強いホワイトでもあります。
透明色の白ってどういうこと?と思って購入してみましたが
クリアなメディウムに白を少し混ぜたような印象でした。
透明色の赤い絵の具のイメージが赤いセロファンを連想させるならば
透明な白は乳白色のプラバンのようなイメージかと思います。
番外編 イリデッセントホワイト
こちらはウィンザー&ニュートン社から発売されているホワイトです。
ルフランからも同名の絵の具が発売されています。
雲母を主な主原料として作られているホワイトです。
真珠色(パールホワイト)を特徴としています。
透明色の油絵の具と混色すると効果的で、
暗色の下塗りに重ねて使用するそうです。
個人的にはちょっと気になるので購入して使用してみたいと思います。
番外編 オペークジンクホワイト
イタリアのマイメリ社から発売されている
ピューロというブランドの油絵の具です。
マイメリピューロからはジンクホワイトも発売されていて
そちらは硫化亜鉛を使用した半透明の絵の具ですが
オペークジンクホワイトは
酸化亜鉛を使用した不透明な絵の具となっています。
【注意】ファンデーションホワイト
ファンデーションホワイトは
様々なメーカーから発売されていますが
下地用の絵の具なので描画の際には使用しないでください。
今回は描画用のホワイトを中心にご紹介しているので
ファンデーションホワイトは割愛します。
ホワイトの絵の具に使われている顔料ってどんなもの?
様々なホワイトのご紹介をしてきましたが
顔料に関して度々登場する
白色顔料の名前について簡単にまとめました。
鉛白
白鉛、唐土とも呼ばれ主成分は塩基性炭酸鉛です。
最も古くから使用されてきた白色顔料です。
人体に有毒のため使用上制限を受け
その生産も減少傾向にありますが
現在でもなお重要な白色顔料のひとつです。
亜鉛華
酸化亜鉛からできています。
白色顔料として最初に作り出されたのは18世紀からで
19世紀になってフランスで工業的に製造され始め
無毒のため鉛白に変わって用途が広まりました。
酸化チタン
チタン白は酸化チタンを主成分とする白色顔料で
20世紀になってから発達しました。
着色力、隠蔽力が白色顔料中最も大きいので
各方面で需要がどんどん大きくなり、
現在では白色顔料の代表顔料となっています。
酸化チタン顔料には主に
酸化チタンからできているものと
硫酸カルシウムまたは
硫酸バリウムを含んでいる複合顔料と呼ばれるものがあるそうです。
歴史に名を残したあの画家はどんなホワイトを使っていたの?
今の私たちはホワイトの種類が
たくさんあって迷ってしまいますが
皆さんがよく知る歴史上の画家たちは
一体どんなホワイトを使用していたのでしょうか?
画家の使うパレットを調べると
それぞれの画家によって使用している色は違いますが
ホワイトはどの画家のパレットにも使用されており、
種類もほぼ共通していました。
そのホワイトとはズバリ!
シルバーホワイトです!
「顔料及び絵具 改訂版」に興味深い内容が載っていたのでご紹介します。
時代順に抜粋するとこんな感じです。
(年代の横の数字はパレットの色数です。)
フレークホワイト
- ダビット(1748-1825年)19色
1782年に亜鉛華を顔料として用いることが提案された。
シルバーホワイトとフレークホワイト
- アングル(1781-1867年)19色
1821年にチタン白が発明。
ジンクホワイト
- ドラクロワ(1799-1863年)34色
1850年ごろから亜鉛華が油彩画に登場してきた。
シルバーホワイト
- ミレー(1814-1875年)22色
- ピサロ(1830-1903年)7色
- ルノワール(1841-1919年)14色
- ゴッホ(1853-1890年)10色
シルバーホワイトとジンクホワイト
- セザンヌ(1839-1906年)20色
- マチス(1869-1954年)25色
気になるのはアングルが
シルバーホワイトとフレークホワイトの両方を
パレットに乗せていたことです。
シルバーホワイトもフレークホワイトも
今では同じ絵の具のように扱われていますが
当時は別の色の絵の具として存在していたということかもしれません。
この辺りの歴史も気になるので個人的にいつか調べてみたいです。
そしてもう一つは
ドラクロワがジンクホワイトを使用していたという点です。
ドラクロワよりも後に活躍した
ルノワールやゴッホが
シルバーホワイトを使っていて
セザンヌやマチスの頃に
ジンクホワイトも使う画家が現れてきたことを考えると
ドラクロワの時代では
ジンクホワイトを使うのは珍しかったのではないかと思います。
(もちろん残っていたパレットを調べた段階で使用していた絵の具なので初期の頃はシルバーホワイトを使用していたと思います。)
ドラクロワが晩年の頃に
亜鉛華(ジンクホワイトの顔料)が
油彩に取り入れられるようになったことを考えると
ドラクロワは積極的に
新しい画材に挑戦する
研究熱心な画家だったのかもしれません。
(このあたりの当時の絵の具事情を絵画史の流れと合わせて詳しく知りたいところです!)
ドラクロワは上記に挙げた画家の中では
パレットに最も多く絵の具を出していた人物でもあります。
そしてルノワールやゴッホは
亜鉛華の欠点を理解していたから
印象派の画風に合わないと思って使用しなかったのかもしれません。
時代の関係で仕方ないことですが
昔はホワイトに種類が無かったため
鉛白系のホワイト(シルバーホワイト)しか
選べない画家が多かったということだと思います。
ホワイトの絵の具が開発されていくことで
今の私たちはたくさんのホワイトから
絵の具を選ぶことができて
それが当たり前になっていますが
素晴らしい名画を残していった画家たちも
今の私たちのようには
ホワイトを選ぶことができませんでした。
私たちが迷うほどの中から
ホワイトを選べるということは現代の特権なんですね。
まとめ
初めて油絵具を購入される方にはパーマネントホワイトかチタニウムホワイトがおすすめです。
そして中級者以上の方にも楽しんで頂けるような記事になっていればいいなと思います。
油絵に慣れている人は自分の描き方や目指したい作品の印象に合わせてホワイトを選ぶと良いと思います。
私自身、改めて絵の具について調べなおして多くのことを知りました。
少し昔の文献も参考にしているので
最新の絵の具事情とは少しずれることがあるかもしれませんが
大筋の部分は変わらないと思います。
それぞれの絵の具ってこういう感じなんだなと思っていただければ幸いです。
参考文献
書籍
ホルベイン工業技術部編.『絵の具の科学[改訂新版]』.中央公論美術出版,平成30年,205p
ホルベイン工業株式会社.ホルベイン工業技術部編.『絵具の辞典』.中央公論美術出版,平成8年,277p
桑原利秀 安藤徳夫 共著.『顔料及び絵具 改訂版』.共立出版株式会社,昭和28年,222p
カタログ
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ホルベイン油絵具 COLOR CHART OF HOLBEIN ARTISTS’ OIL COLORS [2015 Version]
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